今日は、令和5年度 第23問について解説します。

令和5年度賃貸不動産経営管理士試験 第23

建物賃貸借契約における修繕及び費用償還請求権に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

 

①建物共用部内の下水管が破損し賃貸住宅の寝室に漏水が発生したときに、賃貸人が長期海外旅行中で連絡が取れない場合、賃借人は賃貸人の帰国を待たなければ、賃貸住宅の修繕を行うことができない。

②経年劣化により故障したトイレの修繕のための費用(必要費)を賃借人が支出しているにもかかわらず、賃貸人がその支払を拒む場合、賃借人は、賃貸借契約が終了しても、賃貸住宅全体の明渡しを拒むことができる。

③賃貸借契約が終了し、賃貸住宅を明け渡してから1年半が経過した時点で、賃借人が必要費を支出していたことを思い出し、賃貸人に対して必要費償還請求権を行使した場合、賃貸人は支払を拒むことができない。

④造作買取請求権排除の特約が付されていない建物賃貸借契約において、賃借人が賃貸人の承諾を得て付加した造作に関し、賃借人が賃貸借契約終了時に造作買取請求権を行使した場合、賃貸人は賃借人と造作にかかる売買契約を締結しなければならない。

 

 

解説

賃貸借契約における、修繕義務と費用償還請求権に関する問題です。

 

それでは選択肢をみていきましょう。


選択肢①

建物共用部内の下水管が破損し賃貸住宅の寝室に漏水が発生したときに、賃貸人が長期海外旅行中で連絡が取れない場合、賃借人は賃貸人の帰国を待たなければ、賃貸住宅の修繕を行うことができない

 

×不適切です。

目的物の修繕義務について、まとめシートでは以下の通り解説しています。

賃貸借契約では、原則として貸主が建物の修繕を行いますが、借主から貸主に通知したにもかかわらず相当の期間内に修繕しない場合、貸主が必要であることを知っていながら修繕しない場合、急迫の事情がある場合は、貸主の承諾を得ずに借主が修繕を行うことができます。部屋に漏水が発生などという事態は、まさに急迫の事情と言えるでしょう。

つまり、建物共用部内の下水管が破損し賃貸住宅の寝室に漏水が発生したときに、賃貸人が長期海外旅行中で連絡が取れない場合、賃借人は賃貸人の帰国を待たなくても、賃貸住宅の修繕を行うことができます

よってこの選択肢は不適切です。


 

選択肢②

経年劣化により故障したトイレの修繕のための費用(必要費)を賃借人が支出しているにもかかわらず、賃貸人がその支払を拒む場合、賃借人は、賃貸借契約が終了しても、賃貸住宅全体の明渡しを拒むことができる。

 

〇適切です。

費用償還請求について、まとめシートでは以下の通り解説しています。

修繕費用を借主が負担した場合、借主は貸主にその費用を請求することができます。

借主が必要費を支出した場合は、借主は直ちに返してもらうよう請求することができます。借主が必要費を支出したにもかかわらず、返してもらえない場合には、借主は返してもらえるまで建物の明渡しを拒むことができます(留置権の行使)

よってこの選択肢は適切です。


 

選択肢③

賃貸借契約が終了し、賃貸住宅を明け渡してから1年半が経過した時点で、賃借人が必要費を支出していたことを思い出し、賃貸人に対して必要費償還請求権を行使した場合、賃貸人は支払を拒むことができない

 

×不適切です。

借主が必要費や有益費を支出した場合は、貸主が返還を受けたとき=明け渡したときから1年以内に請求しなければならないとされています。なお、借主の義務違反により損害が発生した場合の貸主から借主への損害賠償請求も、同様に返還を受けたときから1年以内とされています。(民法第600条)

つまり、賃貸借契約が終了し、賃貸住宅を明け渡してから1年半が経過した時点で、賃借人が必要費を支出していたことを思い出し、賃貸人に対して必要費償還請求権を行使した場合、賃貸人は支払を拒むことができます。思い出すのが少し遅かったですね、残念です。よってこの選択肢は不適切です。


 

選択肢④

造作買取請求権排除の特約が付されていない建物賃貸借契約において、賃借人が賃貸人の承諾を得て付加した造作に関し、賃借人が賃貸借契約終了時に造作買取請求権を行使した場合、賃貸人は賃借人と造作にかかる売買契約を締結しなければならない

 

×不適切です。

造作買取請求権について、まとめシートでは以下の通り解説しています。

貸主の承諾を得て付加した造作は、賃貸借契約が終了するときに、借主は貸主に対して買い取るように請求できます。これは買い取り請求という意思表示をした時点で、売買契約が成立したのと同様の法律効果がありますので、わざわざ売買契約を締結する必要はありません。

つまり、造作買取請求権排除の特約が付されていない建物賃貸借契約において、賃借人が賃貸人の承諾を得て付加した造作に関し、賃借人が賃貸借契約終了時に造作買取請求権を行使した場合、賃貸人は賃借人と造作にかかる売買契約を締結しなくても有効に法律効果が発生します

よってこの選択肢は不適切です。法律効果ってなんだっけ?という方は、ぜひこちらの解説も参考になさってください。


 

以上から、正解は選択肢②となります。

 

賃貸借契約において、貸主・借主それぞれにどのような権利・義務があるかという内容ついては、必要費、有益費、造作買取請求、用法遵守義務、原状回復義務など、出題されやすいテーマが様々あります。関連事項も含めて、理解を深めていただければと思います。

 

解説に使用している「一発合格まとめシート」はここから立ち読みできますので、ぜひ試してみてくださいね。

 

 

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